ハイコーキ(旧日立工機)のテーブルソーC10FEの改善(割刃が必要な理由、製作と取り付け)

今回の記事では引き続き、C10FEについてご紹介していきたいと思います。

日立工機のテーブルソー

前回の記事ではスタンドの製作とノコ刃の交換を写真付きでご紹介しました。
今回の記事ではこのテーブルソーを使うにあたって改善した点、残り2点を写真付きでご紹介したいと思います。
こちらの記事でご紹介するのはあくまで当店において使いやすくるために行った改良や使い方です。参考にされるときはすべて自己責任でお願いいたします。
電動工具は一度の事故で取り返しのつかない怪我をする場合があります。


以下が解決したい問題点と改善方法の残り2つです。

・割刃が卓上の高さで固定されるため、刃の高さを下げたときに割刃とのこ刃の間に大きな隙間が開き、安全面や加工精度に不安がある
鉄板から丸のこの刃が昇降するのに合わせて上下する様な割刃を製作し、取り付ける

・ノコ刃が出てくるところの板(刃口板)と定盤との間に段差があり送材時に引っかかる。のこ刃周辺の開口部(隙間)も大きいため細い材料が落ちたり引っかかったりして危険
段差と隙間ができない刃口板の自作

今回の記事では上記の内、割刃の製作と取り付けについてご紹介したいと思います。


まずはテーブルソーの危険性について考えたいと思います。
テーブルソーはのこ刃が上向きに露出している事による手の切断事故や、材料が挟まれたり、のこ刃が挟まれることで力を貯めて材料が高速で飛んでくる「キックバック」による事故(尖った材料だったら離れた扉を貫通する場合もあり、それが人に当たれば内臓破裂などの致命的な怪我をする場合もあります)が起きやすい工具です。

そのため、テーブルソーを使う際は十分に特性を理解して、万全の対策をとって使用する必要があります。

高速で回転している鋸刃に材料が挟まったらどんな動きをするかわかりません。
このあたりは押し棒などを使って予期せぬ動きが起きても手を刃から離しておける対策が有効だと思います。
押し棒を用いると名前の通り材料を送り出すときに手で直接抑えるのではなく、押すための道具を使う事で手と刃物の距離を保ち、人の手よりも狭いところに届いたり均等に圧力をかけたりできます。
既製品でも良いですし、自作するのも良いと思います。
既製品では以下のマイクロジグという海外メーカのものが有名です。少し高いですが、手を切るリスクを少しでも軽減できるなら安いのではないでしょうか。

また、刃物が回転する刃物を使うときは服、髪、アクセサリーが巻き込まれない様に服装などにも気を付ける必要があります。
通常は安全のためにつける手袋も、回転する刃物に巻き込まれ大怪我をするのを防ぐため丸のこを使うときや手押し盤を使うときは通常着用しません。


次にキックバック対策です。
テーブルソーで起きるキックバックには大きく分けて以下の2種類があるかと思われます。
・ノコ刃を材料が挟む事で起きるキックバック
・フェンスや治具とのこ刃の間に材料が挟まって起こるキックバック

割刃はこの様な要因で起きるキックバックのリスクを少しでも減らすために取り付けます。
以下の画像の通り、割刃はのこ刃の後方に取り付けます。

刃の後方にこの板がある事で、切断後の材料がノコ刃を挟む事を防げます。
また、切断後の材料が斜めに送られてのこ刃とフェンスの間に挟まり起きるキックバックのリスクも減らすことができます。
この様な安全にテーブルソーを使うためにはなくてはならない割刃ですが、なぜ今回自作する必要があったのでしょうか。

この割刃を英語で調べると二種類の単語が出てきます。
一つはsplitter,もう一つはriving knifeです。

splitterは簡単に言うとテーブル固定式の割刃
riving knifeは丸のこ部分に合わせて動く割刃

と言う感じです。

ちなみにC10FEに付属してきた割刃はこの中間といった感じで、刃の傾きには合わせて傾いてくれるますが、刃を引っ込めるとのこ刃と割刃の間に大きな隙間が開き危険です。

さらに、切りきらず溝を掘る様な加工では取り外す必要があり、作業効率も悪くつけ忘れのリスクもあります。
このsplitterとriving knifeの違いや共通点について海外のWikipediaに簡潔に掲載されていたので引用したいと思います。

Riving knife versus splitter


A splitter is a stationary blade of similar thickness to the rotating saw blade mounted behind it to prevent a board from pinching inward into the saw kerf and binding on the saw blade, potentially causing a dangerous kickback.Like a riving knife, its thickness should be greater than the body of the saw blade but thinner than its kerf.Blades with a narrow kerf relative to their body are more susceptible to grabbing and kickback.

A riving knife has these advantages over a splitter:

  • It does not need to be removed from the saw when cross-cutting or doing a blind (non-through) cut as it does not extend above the top of the saw blade. If it is not removed, the operator cannot forget to put it back on.

  • It sits closer to the back edge of the blade, making it much more effective – less space for the stock to shift into the path of the blade

  • It provides some additional protection for the operator – blocking contact to the back edge of the blade – in those situations where the stock is being pulled from the outfeed side of the saw.

  • It is independent of (and will not interfere with) other blade guards and dust collectors

It achieves all of this by being attached to the saw's arbor, allowing it to move with saw blade as the blade is raised, lowered and tilted.

Riving knives are also fitted to some hand-held electrical circular and powered miter or cross-cut saws (known generically as "chop saws").

As of 2009, Underwriters Laboratories (UL) requires that all new table saw designs include a riving knife.
(WIKIPEDIAより引用 https://en.wikipedia.org/wiki/Riving_knife)

上記の文章を日本語に訳してみると以下の様になります。


"Riving knifeと Splitterの比較"


splitterは回転する丸のこ刃の後ろに設置された、のこ刃の厚みに近い厚みの稼働しない据付の刃です。splitterは、切断中の板がのこ刃を挟み込んでしまうといった危険なキックバックの要因を防ぐため設置されています。

riving knifeと同様にsplitterの厚みも、使用する丸のこ刃の刃がついてないボディ部分(板の部分)よりも分厚く、切り刃(チップがついている一番幅の広い部分)よりも薄いことが求められます。

丸のこのボディ部分(板部分)に対して、切り刃の幅が狭いほど材料が引っかかってキックバックを起こしやすい傾向があります。

riving knifeはsplitterに比べて以下の様な利点があります。


・横切りをするときや材料を切りきらない様な加工をするときに取り外す必要がない。これは、riving knifeがsplitterと違い丸のこ刃の頂点よりも上に出ないからです。外す必要がないということはつけ忘れるということもありません。

・のこ刃の後方のカーブにより近い位置で設置できるので、キックバック防止効果がより期待できます。また近くに設置できることで丸のことブレードの間を狭くできるので丸のこの刃のラインに材料が入ってくることも防げます。

・例えばテーブルソーで切断後の材料を手前に持ってくる時などに、作業者が回転する丸のこ刃の後方に触れることも防ぐことが出来ます。

・他のブレードガードや集塵設備に対して独立しているので、干渉することがありません。


splitterはテーブルソーの主軸近くに取り付けられる事でのこ刃と連動して動きます。この事で刃の高さを上げても下げても斜めにしてもいつでも上記の利点を全て満たします。

riving knifeはテーブルソーのみでなく、手持ちの丸のこやショップソーとして知られるスライド丸のこなどにも取り付けられています。
(翻訳終わり)

この様にsplitterに対してriving knifeは利点がいっぱいある事がわかります。

実際にC10FEに付属の割り刃を取り付けてみてみると丸のこの出を減らした時に大きな隙間が開くのが以下の画像からわかると思います。

さらに丸のこの頂点を超えた高さまで割刃が来ているので材料の途中まで切り込む様な加工をするときは外さなくてはいけません。


それなら全部刃を出し切って使えば良いのではないかと言う意見もあるかもしれませんが、刃の出し過ぎもキックバックの要因になると言われているので必要最低限の高さで使ってもブレードと等間隔の位置に割刃が来ていることが望ましいのです。
この様な理由があり、割刃を自作する事にしました。

素材は2.3mm厚の鉄板です。海外の市販されてたりテーブルソーに付属している割刃も調べたのですが厚みは2.0mmが多い様です。

この割刃の厚みは上記のWikipediaにも書いてありましたが、使用する丸のこ刃の刃がついてないボディ部分(板の部分)よりも分厚く、切り刃(チップがついている一番幅の広い部分)よりも薄い厚みにしました。
(付属していた割刃もおなじく2.3mmだったのでそこから切り出そうかとも思ったのですが、一応取っておきたいので新たに鉄板を購入しました。)

取り付けた刃の寸法は二枚とも鋸身厚が1.8mm、アサリ幅は40枚の方が2.4mmで72枚の方が2.8mmでしたので2.3mm厚ならどちらの刃でも使える厚みです。

割刃の形はインターネットでriving knifeと画像検索して色々なデザインを見ながら決めました。

まずは段ボールで実寸大のモデルを作ります。

この型板に取り付け部の穴の位置なども記録し、その通りに鉄板を切断していきます。

今回はジグソーに鉄鋼用の刃を取り付けて大まかな形を切り出し、その後ベルトサンダーで形を整え面取りをしました。




取り付け穴を開けてM6のネジで締めて完成です。
取り付けてのこ刃を上下して見ました。

上の方で紹介した画像に比べてどちらの高さにしても割刃と鋸刃の間が一定なのがわかると思います。

割刃の取り付け箇所ですが、なぜかこのC10FEにはちょうど良い取り付け場所が確保されていました。この位置に2.3mmの板を取り付けるとちょうど良い塩梅に固定できます。

上からみるとのこ刃の直線上にこのプレートがあるのがわかると思います。

ネジ穴は3つ開けてあり、一つはM6なのですが残りの二つはサイズ不明です。インチ規格のユニファイとウィットのネジも試したのですが未だ不明です。インターネットで調べると他にも割刃(riving knife)を作ってここに取り付けてる人がいる様ですが、いずれにしてももしご自身で取り付けされる場合は自己責任でお願いいたします。

さて、少し長くなりましたがこれで割刃もできたのであと残るは刃口板の製作です。
次回の記事では刃口板の製作の様子をご紹介したいと思います。

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