家具屋さんから刃物研ぎと鉋の台直しのご注文頂きました。


既にHPやブログ、インスタグラムなどでご存知の方も多いと思いますが、Studio7Squaresでは刃物研ぎや大工道具の調整のご依頼を受け付けております。

包丁だとステンレス包丁から出刃包丁や菜切り包丁の様な和包丁まで、日用品だとハサミや和剃刀まで対応可能な刃物は全てご注文可能です。
※練馬、東松山へのお持ち込み(練馬の場合は後日お渡し)はもちろん、
HPからお申し込み頂き、レターパックなどの郵送でのご対応も可能です。


当店で対応している刃物研ぎの中でも当店ならではのサービスが大工道具の刃物研ぎや調整だと思っています。
鑿(のみ)や鉋(かんな)などの大工道具は当工房でも毎日の様に使用するもので、その研ぎと調整にはとても気をつかい、研ぐたびに新たな発見や気付き、反省も出てきます。
その発見や気付きや反省を、お預かりした道具を研ぐのに役立てる事ができるからです。

お客様の好み、用途、気になる点など伺いながら、最終的にご満足頂ける研ぎや調整ができたら我々としてはそれ以上に嬉しいことはありません。
※最善を尽くして作業にあたりますが、やはり研ぎ方の癖や求める切れ味、使う砥石によって刃物の切れ味は変化するので、シビアな研ぎや調整を求めるプロの方はその点ご了承の上ご依頼下さい。



今回は家具屋さんから、鉋の刃研ぎと台直し、旋盤用の刃物(ガウジ)×3と鑿の研ぎをご注文いただきましたので刃物とぎの事例としてご紹介させて頂きたいと思います。
(以前の記事で一部触れている部分がございます)

まずは鉋の台直しから。
鉋の台に使われる木材は一般的には白樫という木材で反りが少ない材料なのですが、やはり定期的に台直しをする必要があります。
薄削を極める方の中には木材を積層して反りを少なくした鉋台を使われる方もいらっしゃいますが、通常はよく湿度管理されて時間をかけて乾燥した材料を使います。

今回お預かりした鉋は台全体が大きく狂っていたので、最初に平面がきちんと出た分厚いガラスの上でサンディングし、完全な平面を作りました。
ちなみにこれは鉋直し用にガラスの厚板の周りに木製のケースをつけたものです。



お預かりした時は下端(鉋の材料に接する側)が離れる形で反っていたので、刃をたくさん出さないと材料に刃があたらず、刃の出し過ぎによって逆目が起きやすくなっていました。




台なおしの際は刃を抜かずに台に仕込んだ状態で作業を行わないと、台に仕込んだ時にまた台の形が変わってしまうので注意です。
(勿論、刃はサンディングペーパーに接しない様にします)

お預かりした段階では刃口がへっこんでいる状態だったのでまず台頭と台尻が削れていきます。



台に鉛筆で書いたラインが全て消えるまで一度研磨し、ストレートエッジという平面を見る専用の定規を台にあて台の状態を確認します。
これでひとまず真っ平になりました。


このままペッタンコの状態では使えないので、下端の台頭側と下端の中央付近をガラス板にはったサンディングペーパーやスクレーパー、台直し鉋等をつかって減らし下端の調整は完了です。
(この時は作業に夢中で削った後の写真がありません、、、)
他にご希望が有れば刃口の口埋め等を行なって、刃を研いで仕込んでお渡しです。

この鉋は押さえ溝がいびつな形をしていて狭く、真っ直ぐ刃を出すことができなくなっていたので鑿で調整し、試し削りをしてお渡ししました。

お客様に、「今まで削った中で一番薄い鉋屑が出せた」と言って頂けました。



次に旋盤用の刃物、ガウジの研ぎです。
こちらもお預かりした時はディスクグラインダーで削り熱がこもって変色した跡がありました。
こちらもお客様と相談させて頂き、ご希望の形で研ぎ直しました。

まずはもとの状態です。


どちらも傷と、両頭グラインダーでついたと思われるヘコミや歪みが見受けられました。
トルメックや治具などを使い研ぎます。
下の画像が研磨後の刃先の様子です。


旋盤用の刃物はHSS(ハイス鋼)と呼ばれる金属で作られていることがほとんどなので、通常グラインダーで研磨しますが、今回は最後に仕上げ砥石をあててあります。


さて、次に鑿(のみ)の研ぎです。
こちらはお持ち込み頂いた時は大きな欠けはなかったにもかかわらず、例えば面取りをしようとすると刃先が木の繊維に入っていかず、力を入れないと削れない状態でした。

上の画像はお預かりした状態の写真で、下の画像はトルメックの治具をつかって研ぎ始めたところです。
向かって右側の鎬面が研磨されて光っているのが分かると思います。

これは余談ですが、トルメックはもともと西洋の鑿や鉋を想定して作られており、西洋の鑿は通常二段刃を付けます。
これは西洋の鑿と日本の鑿の作の違いが理由なのですが、そういう事情もあり西洋の鑿の二段刃を研ぐ時は円研石の外径のカーブはあまり気になりません。

ところが日本の鑿の様に、広い鎬面を平に仕上げる場合は比較的そのカーブが目立ってしまいます。
このことがトルメックの欠点とされるところなのですが、トルメック社が販売しているアクセサリーにMB100という物があり、これを使うことで砥石側面の平らな面を使うことが出来ます。
(付属の戸面直し:TT50)を使うことで側面の平面を修正することも可能です。

現在はオフコーポレーションなどで販売されてますが、私が購入したときは日本で販売しているところがなかったのでeBayをつかってイギリスの会社から日本販売価格の7割ほどで個人輸入しました。
円研の側面を使って鑿の鎬面の平面を作っているところ
その後、仕上げ砥石を用いて鎬面を研ぎ、ダイヤモンド砥石と仕上げ砥石を使って裏押しをし完了です。
最終的には産毛が剃れるくらいの切れ味になりました。

下の写真で、鉛筆が歪みなく写り込んでいるのがわかると思います。
刃角度などはお客様にお持ち込み頂いた時の刃角度に合わせてあります。



お客様には先にご満足いただけた様でほっとしております。

Studio7squares ではDIYや木工用の工具の刃物研ぎも承っております。
お持ちの工具の切れ味を復活させたい、という方は是非一度お問い合わせ下さい。


また、ご自身で研ぎや大工道具の仕込み方について学びたいという方は以下のリンク先の書籍がオススメです。(Amazonのリンクに飛びます)
当店では全て工房の本棚に入っています。
ご興味ある方はご来店の際にお声がけください。





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