ドラムスティックを再利用したアーティストのグッズ制作

あっという間に2021年も2ヶ月が過ぎました。昨年は法人様や量産のご依頼を多数いただいた年でしたが、その中でも思い出深いご依頼の一つ、アーティストのグッズとして制作したお箸をご紹介します。

ドラムスティックの箸

ロックバンド、People  In  The  Boxの山口大呉さんプロデュースの限定グッズ、正式名称は「「棒」#02 PITB御手元」」です。(以前にも「棒」グッズを販売されたみたいです)

12/10に公式サイトで56セット限定で販売され、発売開始直後、わずか3分で完売したそうです。何故限定56セットかというと、ドラマーの山口さんが約4年間に亘り保存しておいた使用済みのドラムスティックを加工して制作しているからなのです!!

people in the box山口さんのドラムスティック

お預かりした加工前のスティックの写真です。初めて見た時、硬い木で作られたドラムスティックがこんなに傷むのかと驚きました。People In The Boxさんの音楽を生み出し、一旦役目を終えたドラムスティックは、箸と箸置きに生まれ変わり、ふたたび木製品として息を吹き替えすこととなりました。

販売開始前にインスタライブで山口さんご本人が告知を行い、その際に製作途中の写真も一部紹介されましたが、アーカイブ等は残っていないので改めてこちらで説明も補足しつつ製作中の写真を掲載します。


研磨後のドラムスティック

まず最初の加工は箸置きの部分のカットです。グリップエンド(ドラムスティックの持ち手側)を使用します。カラーのあるデザインがプリントされているので、これを研磨して落とし、箸置きの長さ分をカットしました。箸置きのくぼみ部分は、スピンドルサンダーという機械を使用して一つづつ形を見ながら仕上げていきます。1本のドラムスティックから、箸置き1個、箸1本の制作となります。


ドラムスティック箸加工中

箸置き分をカットした残りの材を箸の仕上がり長さにカットし、角箸の形状に1面ずつ削っていきます。通常角箸を制作する際は、大きな材からまず1cm角の棒状に加工し、そこから角度をつけて機械で削り出していくのですが、今回は元の形状が円柱状なので材料を固定するのが難しく、ここが加工する上で最も悩ましい部分でした。



1面ずつ角度をつけて削っていきます。だいぶ箸の形が見えてきました。削る前の部分はまだプリントが残っています。4面削って箸の形状が出来上がった後、そのままでは割り箸のように全体が一直線に太いままなので、箸先が細くなるように1本ずつ手作業で確認しながら更に削って仕上げます。


箸の持ち手部分にPeople In The Boxさんのロゴを刻印しています。初めての材料に刻印する際には、事前に同じ材でテストする必要があります。レーザーの照射速度、出力、ハッチングの間隔などの数値を変えながら何度かテスト刻印を繰り返し、最適なパラメータを導き出してから、本番の刻印に取り掛かります。

最後に、仕上げにオイルを塗って完成です。ドラムスティックがヒッコリーというくるみ科の材料だったので、くるみオイルを使用しました。



様々な加工方法や加工手順を検討し、無事完成までたどり着くことができました。
販売告知のインスタライブを工房一同も見守っており、ファンの皆さんが「欲しい!」「すごい!」と大盛り上がりしているのを見て嬉しくなりました。

持ち込み材の加工は、実は新しい材料から制作するよりも遥かに大変なのですが、今回のように思い入れのあるもの、大切なものを形を変えて持ち続けられること、生命のあった木をより永く無駄なく使いきることができるようにお手伝いすることをStudio7Squaresではとても誇りに思っています。




コメント